予約の時間になっても、お客様が来ない。
前日の夜に、急なキャンセルの連絡が入る。
一人や少人数で営むサロンにとって、
キャンセルは売り上げに直接ひびきます。
私自身も小さなサロンを営んでいるので、
その悩みはよく分かります。
とはいえ、キャンセル料を高く設定すれば解決する、
というものでもありません。
この記事では、トラブルを防ぐ
キャンセル規定の考え方と書き方を紹介します。
キャンセル規定は「お店を守る」ためだけのものではない
キャンセル規定というと、
お店がお金を取るための決まりだと思われがちです。
けれど本来は、お店とお客様の両方が、
気持ちよく約束を守るための目安です。
事前にはっきり伝えておけば、
お客様も「この日までなら変更できる」と分かり、
安心して予約できます。
反対に、あとから突然キャンセル料を求めると、
口コミでの低評価や、トラブルにつながりかねません。
キャンセル料を決めるときに知っておきたい法律
消費者契約法:平均的な損害を超える部分は無効
お店とお客様(消費者)の契約には、
消費者契約法が適用されます。
この法律の第9条では、
解約に伴うキャンセル料などのうち、
同じ種類の契約の解約で、
事業者に生じる「平均的な損害」を超える部分は無効
とされています。
消費者庁の逐条解説では、
解約の時期などによって区分ごとに考えること、
実際に生じる損害の内容などをふまえて
判断されることが示されています。
つまり、「いつキャンセルされたか」によって、
お店の損害は変わります。
前日のキャンセルと、1か月前のキャンセルで、
同じ金額を求めるのは無理がある、
ということです。

エステの長期コースは、特定商取引法も
エステティックのサービスで、
期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約は、
特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたります。
この場合、書面を受け取ってから8日間はクーリング・オフができ、
その後も契約期間中はいつでも中途解約ができます。
中途解約のときにお客様に求められる金額にも、
上限が決められています。
長期のコースや回数券を販売している場合は、
消費者庁の「特定商取引法ガイド」で必ず確認しておきましょう。
回数券・前払いの扱いも書いておく
回数券やコースの前払いを受けている場合は、
有効期限と、使わなかった分の扱いをはっきり書いておきましょう。
「途中でやめたいときは、
使った回数分を通常料金で計算し、
残りを返金します」のように、
計算の方法まで書いておくと、
あとから話がこじれにくくなります。
エステの長期コースにあたる場合は、
特定商取引法の上限も確かめたうえで決めてください。
トラブルを防ぐキャンセル規定の書き方
キャンセル規定は、次の点を押さえて書くと、
分かりやすく、トラブルになりにくくなります。
- 時期ごとに分ける:「前日」「当日」「連絡なしのキャンセル」など、区分ごとに決める
- 金額の考え方をはっきりさせる:施術料金の何割か、または定額か
- 変更とキャンセルを分ける:日時の変更は無料、など
- 連絡の方法と期限を書く:電話、予約システム、LINEなど。何時までの連絡か
- やむを得ない場合の扱いを書く:急な体調不良や災害のときの考え方
書き方の例
たとえば、次のように書きます。
- ご予約の変更・キャンセルは、前日の19時までにご連絡ください。日時の変更は無料です
- 前日19時以降のキャンセルは、施術料金の○%を申し受けます
- ご連絡のないキャンセルは、施術料金の○%を申し受けます
- 急な体調不良や災害など、やむを得ない事情の場合はご相談ください
割合や金額は、お店の実際の損害
(その時間に別のお客様を入れられるかなど)を
ふまえて決めます。
迷う場合は、専門家に相談しましょう。
体調不良のときの考え方
体調が悪いのに、キャンセル料を気にして無理に来店されるのは、
お客様にとっても、お店にとってもよいことではありません。
感染症がはやっている時期などは、
「体調がすぐれないときは、
ご遠慮なくご相談ください」と添えておくと、
お互いに安心です。
キャンセル規定のひな形
ここまでの内容をふまえて、
ホームページや予約ページに載せるひな形をまとめました。
割合や時間は、お店の実情に合わせて書きかえてください。
ご予約の変更・キャンセルについて(例)
- ご予約の変更・キャンセルは、ご予約日の前日○時までに、お電話・予約サイト・LINEのいずれかでご連絡ください
- 前日○時までのご連絡であれば、日時の変更・キャンセルともに無料です
- 前日○時を過ぎてからのキャンセルは、施術料金の○%をキャンセル料として申し受けます
- ご連絡のないままご来店がなかった場合は、施術料金の○%を申し受けます
- 急な体調不良や、災害・交通機関の大幅な乱れなど、やむを得ない事情の場合はご相談ください
- 回数券・コースの有効期限と、途中でおやめになる場合の精算方法は、別に定めるとおりです
遅刻の扱いも書いておく
遅刻の扱いも、キャンセルと一緒に書いておくと親切です。
「次のご予約がある場合は、
終了時間を変えずに、施術時間を短くして対応します」のように、
何がどう変わるのかをはっきりさせておきます。
事前に分かっていれば、
お客様も、遅れそうなときに早めに連絡しやすくなります。
キャンセル規定でよくある質問
キャンセル料は、どうやって受け取ればよい?
次回の来店時にいただく、振り込みをお願いする、
予約のときにクレジットカードを登録してもらう、
などの方法があります。
どの方法にするかも、規定に書いておきましょう。
予約システムによっては、
キャンセル料の決済に対応しているものもあります。
初めてのお客様の無断キャンセルが続く
初めてのお客様は、お店との関係がまだできていない分、
予約を軽く考えてしまう方もいます。
初回だけ前払いにする、予約の確定前に電話で確認する、
といった方法を考えてみましょう。
規定を変えたら、いつから適用する?
規定を変えるときは、変更の内容と、いつから適用するかを、
ホームページや予約ページで前もって知らせます。
すでに予約をいただいているお客様には、
予約したときの規定を適用するのが、
トラブルになりにくい考え方です。
規定は「伝え方」で効き目が変わる
どんなによい規定をつくっても、
お客様が知らなければ意味がありません。
- ホームページや予約システムの、予約ボタンの近くに書く
- 初めてのお客様には、予約の確定時に一言そえる
- 前日にリマインドの連絡を送り、変更の期限を伝える
特に効果があるのが、前日のリマインドです。
うっかり忘れによる無断キャンセルが減り、
変更の連絡も早めにもらえるようになります。
無断キャンセルを減らす予約の仕組み
キャンセル料の決まりより先に、
そもそもキャンセルが起きにくい仕組みを整えることも大切です。
- 予約が確定したら、すぐにメッセージを送る:日時、場所、キャンセル規定を書いておく
- 前日にリマインドを送る:予約システムの自動送信を使うと手間がかからない
- 変更しやすくしておく:電話だけでなく、予約システムやLINEからも変更できるようにする
- 初めての方は連絡先を確かめる:つながる電話番号やメールアドレスをいただく
変更の手続きが面倒だと、
連絡をせずにキャンセルする人が増えてしまいます。
「連絡しやすいお店」は、
無断キャンセルが少ないお店でもあります。
予約確定とリマインドのメッセージ例
予約が確定したときは、たとえば次のように送ります。
「ご予約ありがとうございます。
○月○日(○)○時から、60分コースで承りました。
変更・キャンセルは、前日の19時までに
このLINEでお知らせください。
お会いできるのを楽しみにしています。」
前日のリマインドは、短く、変更の方法も添えます。
「明日○時から、ご予約をいただいております。
ご都合が悪くなった場合は、
今日の19時までにご連絡ください。
お気をつけてお越しください。」
どちらにも、期限と連絡の方法を毎回入れておくと、
「知らなかった」というすれ違いを防げます。
規定を見直すタイミング
キャンセル規定は、一度決めたら終わりではありません。
料金を変えたとき、予約の方法を変えたとき、
キャンセルによるトラブルが続いたときなどに、見直しましょう。
見直した規定は、ホームページと予約システムの両方に反映させ、
食い違いがないようにしておきます。
キャンセル料をお願いするときの伝え方
規定どおりにキャンセル料をお願いするときも、
伝え方には気をつけたいものです。
まずは、連絡をくれたことへのお礼と、
規定の内容を落ち着いて伝えます。
「ご連絡ありがとうございます。
当日のキャンセルとなりますので、
恐れ入りますが、ご案内している規定にもとづき、
施術料金の○%をお願いしております」のような形です。
強い言葉で請求したり、何度も催促したりすると、
かえってトラブルや悪い口コミにつながりかねません。
規定を事前に伝えておくことと、
連絡の記録を残しておくことが、
いざというときの支えになります。
キャンセルが続くお客様には
連絡なしのキャンセルを何度もくり返す場合は、
次回から前払いをお願いする、予約をお断りする、
といった対応も考えられます。
対応を決めるときは、感情的にならず、
事実を記録したうえで、規定にそって落ち着いて伝えましょう。
利用規約の一文をそろえたい方へ
迷惑行為への対応やご利用のお断りなど、
利用規約に入れておきたい一文の例は、
小さな職場のカスハラ対策のキットにも収録しています。
まとめ
キャンセル規定は、
お店とお客様が気持ちよく約束を守るための目安です。
消費者契約法では、
平均的な損害を超えるキャンセル料は無効になるので、
時期ごとに分けて、無理のない金額にしましょう。
エステの長期コースを扱う場合は、
特定商取引法も確認が必要です。
そして、規定は予約の前にはっきり伝え、
前日のリマインドで忘れを防ぐ。
具体的な金額や規約の文言に迷うときは、
弁護士などの専門家や、消費生活センターにご相談ください。

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