こんにちは。看護師として30年以上、
病院でたくさんの方の最期に
立ち会ってきた渋谷です。
PONO那覇では、おひとり様の身元保証や、
亡くなった後の手続きのご相談を受けています。
50代になって、「もし今倒れたら、誰が病院に
来てくれるのだろう」と考えるゲイの方は
少なくありません。
親やきょうだいと疎遠だったり、パートナーがいても
法律上の家族ではなかったりすると、入院や
最期の場面で不安を感じやすいからです。
この記事では、身寄りの少ないゲイの男性が
元気なうちにできる準備を、国のガイドラインや
制度をもとに整理しました。
ゲイのおひとり様が終活でぶつかりやすい3つの場面

身寄りが少ない人の終活で困りやすいのは、
次の3つの場面です。
- 入院や施設に入るとき:身元保証人や緊急連絡先を求められる
- 自分の意思を伝えられなくなったとき:治療の方針を、誰と話し合えばよいかわからない
- 亡くなった後:葬儀や納骨、部屋の片付け、スマホの中のデータ、財産をどうするか
一般的な終活では、相続や葬儀などお金の話が
中心になりがちです。
けれども、身寄りの少ない人にとっては、
その前の「入院」や「医療の意思決定」も
大きな課題になります。
また、法律上の婚姻をしていないパートナーは、
相続人にはなりません。
何も準備をしていないと、長く一緒に暮らした相手に
財産を残せなかったり、
手続きにかかわれなかったりすることがあります。
看護の現場でも、ご本人にとって大切な人が、
家族ではないという理由で説明の場に入れず、
戸惑う姿を何度も見てきました。
だからこそ、元気なうちに「誰に、何を託すか」を
決めて、形にしておくことが大切です。
入院のときの「身元保証人がいない」問題
厚生労働省は2018年の通知で、入院による治療が
必要なのに、身元保証人等がいないことだけを理由に
入院を拒否することは、医師法第19条第1項に
抵触するという考え方を示しています。
さらに2019年には、医療機関が
身寄りのない患者にも必要な医療を提供できるよう、
「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が
困難な人への支援に関するガイドライン」も
作られました。
とはいえ、実際の入院手続きでは、身元保証人や
緊急連絡先を書く欄があるのが一般的です。
いざというときに慌てないよう、
次のような準備をしておくと安心です。
- 緊急連絡先になってもらう人(パートナーや信頼できる友人)を決め、本人の了解をもらっておく
- 財布やスマホのケースに、緊急連絡先と持病・飲んでいる薬を書いたカードを入れておく
- 頼める人がいない場合は、身元保証サービスの利用を考える
那覇市のパートナーシップ・ファミリーシップ登録
那覇市には「パートナーシップ・ファミリー
シップ登録」という制度があります。
市の公式ページでは、この制度は市の要綱で
定めたもので、相続や税控除など法律上の効果が
生じるものではないと説明されています。
一方で、登録証明書を示すことで
利用できるサービスもあり、その一覧は市のページで
公開されています。
登録を考えている方は、なは女性センターに
問い合わせてみてください。
法律上の効果がない分、後で紹介する任意後見契約や
遺言とあわせて準備しておくと、
より確かな備えになります。
「もしものとき」の医療は、信頼できる人と話し合っておく
厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアを
前もって考え、家族など信頼できる人や
医療・ケアチームと話し合っておく
「人生会議(ACP)」をすすめています。
2018年に改訂された国のガイドラインでは、
ここでいう「家族等」は、
法的な意味での親族関係のみを意味せず、
親しい友人なども含み、
複数いてもよいとされています。
単身世帯が増えることを見越した改訂です。
同じガイドラインでは、自分の意思を
伝えられなくなったときに備えて、意思を
推定してくれる人を前もって決めておくことの
大切さも示されています。
つまり、パートナーや親しい友人を
「自分の意思をよく知っている人」として決め、
医療・ケアチームにも
伝えておくことができるということです。
話し合いの内容は、文書にして本人と
信頼できる人の両方が持っておきましょう。
書いておきたいのは、次のようなことです。
- 延命のための治療(人工呼吸器や胃ろうなど)を、どこまで望むか
- 最期をどこで過ごしたいか(病院・施設・自宅)
- 連絡してほしい人、知らせないでほしい人
- 自分の意思を代わりに伝えてほしい人
- 大切にしたいこと、してほしくないこと
看護師としての経験からいうと、本人の希望が書面で
残っていると、医療チームも迷わずにその希望に
沿って動きやすくなります。
気持ちは時間とともに変わるものなので、
一度書いて終わりにせず、
ときどき見直すようにしましょう。
判断能力が落ちたときと、亡くなった後の備え
任意後見契約
厚生労働省の「成年後見はやわかり」によると、
任意後見制度は、ひとりで決められるうちに、将来に
備えて自分で選んだ人と、
代わりにしてもらいたいことを契約で
決めておく制度です。
契約は、公証人が作成する公正証書で結びます。
判断能力に不安が出てきたら、家庭裁判所が
任意後見監督人を選び、そこから契約の効力が
生まれます。
信頼できるパートナーや友人、専門職などを
任意後見人に選んでおけば、お金の管理や
介護サービスの契約を任せることができます。
成年後見制度のしくみは、
成年後見制度の記事でくわしくまとめています。
遺言で、財産を残したい人を決めておく
パートナーや友人、お世話になった団体などに財産を
残したい場合は、遺言を書いておく必要があります。
自分で書いた遺言書は、法務局で
預かってもらう「自筆証書遺言書保管制度」も
使えます(保管の申請手数料は1通3,900円)。
内容に不安がある場合は、公証役場で
公正証書遺言にする方法もあります。
死後事務委任契約
葬儀や納骨、役所への届け出、部屋の片付けなど、
亡くなった後の手続きを頼む契約が
「死後事務委任契約」です。
どんな葬儀にしたいか、誰に知らせてほしいかまで
決めておけば、自分らしい送り方を
実現しやすくなります。
くわしくは、死後事務委任契約の記事をご
覧ください。
スマホやパソコンの中のデータ

国民生活センターの注意喚起では、
ロックのかかったスマホやパソコンは、
パスワードがわからないと遺族でも開くのが非常に
難しいことや、サブスクリプションは
解約しない限り請求が続くことが紹介されています。
プライバシーを守りたい人ほど、「誰に、何を、
どう処理してほしいか」を決めておくことが大切です。
残したいもの、見られずに消してほしいもの、解約が
必要な契約を分けて書き出し、死後事務を頼む相手と
共有しておきましょう。
具体的な整理のしかたは、
デジタル終活の記事でまとめています。
身元保証サービスを選ぶときに確かめたいこと
頼れる人がいない場合は、身元保証や死後事務を
引き受ける事業者を利用する方法もあります。
国は2024年に「高齢者等終身サポー
ト事業者ガイドライン」をまとめ、事業者が
守るべきことを示しました。
契約の前には、少なくとも次の点を
確かめておきましょう。
- 契約書と重要事項説明書を渡して、内容をきちんと説明してくれるか
- 預けるお金(預託金)を、事業者の運営資金と分けて管理しているか
- 寄付や遺贈を、契約の条件にしていないか
- 料金や解約の条件を、ホームページなどで公開しているか
- 提供したサービスの記録を残し、定期的に報告してくれるか
ゲイであることを伝えたうえで、パートナーや
友人とのかかわり方まで一緒に
考えてくれる相手かどうかも、大切なポイントだと
私は考えています。
選び方のくわしい説明は、
身元保証サービスの記事にまとめています。
まとめ|「誰に、何を託すか」を元気なうちに形にする
身寄りの少ないゲイの終活では、入院、
医療の意思決定、亡くなった後の手続きの3つに
備えることが大切です。
国のガイドラインでは、医療の話し合いに
加わる「家族等」に親しい友人も
含まれるとされています。
信頼できる人を決めて希望を文書に残し、
任意後見契約や遺言、死後事務委任契約で
法的な形にしておきましょう。
ひとりで抱え込まず、
できることから少しずつ始めてください。
身元保証や死後事務について相談したい方は、
PONO那覇のお問い合わせページからご
連絡ください。
参考にした資料
- 厚生労働省医政局医事課長通知「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(2018年4月27日)
- 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
- 那覇市「那覇市パートナーシップ・ファミリーシップ登録」
- 厚生労働省「人生会議ポータルサイト」
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発の在り方に関する報告書」(2018年3月)
- 厚生労働省「成年後見はやわかり 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)」
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度 手数料」
- 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(2024年11月20日)
- 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(主なポイント)」(2024年6月)

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